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『天皇とアメリカ』吉見俊哉、テッサ・モーリス-スズキ(集英社新書 0532C)

天皇とアメリカ



『天皇とアメリカ』
吉見俊哉、テッサ・モーリス-スズキ(集英社新書 0532C)


歴史学者のテッサ・モーリス=スズキは、母語のほか数カ国語で大学の講義ができるほどの語学の天才であり、博打打ちで作家の森巣博の妻。本書を読み始めて気づいたけど、森巣博の本名は鈴木で、森巣というペンネームは妻の姓だったようだ。第二次大戦中の“従軍慰安婦問題”で日本政府を非難する発言をして反日派と見られているらしい。

社会学者の吉見俊哉は、都市や博覧会の分析を進める一方で、戦後政治や天皇制に関しても著作があるカルチュラル・スタディーズの紹介者。

本書は、「天皇とアメリカ」をテーマにテッサ・モーリスと吉見の2人が5年間にわたって行った対談をまとめたものだという。

明治政府による国民国家創造のための近代的天皇を浮き彫りにした「第一章 近代」、天皇の身体性が帝国主義化する日本の中で担うことになった役割と第二次大戦後の占領政策における天皇の役割に迫った「第二章 現代」、そして「第三章 現在」ではオバマ大統領の誕生と天皇制の今後についての検証が続く。

なぜ「天皇とアメリカ」がテーマとなり得るのか。冒頭でその答えは明らかにされる。明治時代以降の近代天皇制は、そもそも西欧の帝国主義を内包していたが、開国の発端を作ったのはアメリカである。黒船に恫喝されたことによる開国を、岸田秀は日本がアメリカによって「強姦された」と書き、そのことが日本人にとって超克しがたいコンプレックスとなっていることを指摘している。

第二次大戦後の天皇制について、吉見はこうまとめている。

アメリカが諸々の力を束ね、『象徴天皇制』と自民党の長期支配を支える非常に大きな留め金となっていった。つまり、天皇とアメリカという問いを立てることによって、そうした力の交錯の構造が、内側と外側をつなぐ位相で見えてくるのではないでしょうか。

連合各国の反対にもかかわらず、アメリカが天皇制を存続させたのは日本を統治するための装置として利用価値を見いだしたからだ。

吉見は、ここ10年はネオ・ナショナルな潮流やそれを支えるマスメディアのシステムが根を張っていると見ている。

ネオ・ナショナリズムとアメリカへの従属は、まったく同じプロセスをたどって表裏一体です。それはまさしく戦後日本の根幹だったと思います。

天皇という呼称について、藤田覚の『幕末の天皇』を引きながら驚くべきことを話している。「天皇」の諡号・追号がおくられる慣例は、967年に没した村上天皇を最後に途絶えた。以降は、「院」と呼ばれるのが通例で、1840年に没した光格天皇において復活するまで、中世・近世を通じて約870年間にわたって「天皇」は存在しなかった。光格天皇は、1779年に皇位について以来、大嘗祭の復古、京都御所の平安様式への回帰、石清水・賀茂神社の祭礼復活など、途絶えていた「天皇」の権威を復活させている。近代天皇は明治政府が作ったといえるが、その直前に天皇の権威は復活の兆しをみせていたのだ。

米軍基地の不可視化という点で、興味深いのが外国人登録に在日米軍人およびその家族はカウントされていないという事実である。朝鮮戦争が終わり、東京オリンピックを向かえようとしていた1963年の外国人登録統計では、総数は64万920人だが駐留中の米軍人8万9454人および7万3833人のその家族、外国籍の軍属数千人を合わせた17万人以上がは加算されていなかった。さらに、朝鮮戦争中および済州島の四・三事件後に密航してきた朝鮮人約10万人も入っていないという。日本人は、米軍基地と密航者は見たくないものとしてネグレクトすることで、高度経済成長を謳歌したのだ。

第三章で、天皇制から共和制への以降に関して検討しているが、残念ながら「少しづつ積み重ねで」としていて具体的な方策が語られるわけではない。

若者たちの天皇に対する関心が薄れているとされるなかで、天皇と天皇制の本質について語ることへのタブーは高まりつつあるという。そうしたタブーへの挑戦としても本書は評価されるべきなのだろう。


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