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『「理科」で歴史を読みなおす』伊達宗行(ちくま新書 841)

「理科」で歴史を読みなおす



『「理科」で歴史を読みなおす』伊達宗行(ちくま新書 841)

著者は、日本物理学会会長を務めた物理学者。本書は、「理科」の視点で歴史を読み直そうとするものだが、3分の2は日本の歴史が中心になっている。

縄文土器に残るドット記号による数字の表現に注目し、354という3つの数字があったと書いている。これは直角割り出し法を意味し、さらには太陰暦の1年である354日を意味する。直角を割り出すことができなければ、三内丸山遺跡の櫓のような巨大な施設は建設できなかったはずだし、35センチを基本とする「縄文尺」の存在もうなずける。さらには、日本にある多くの遺跡が春分・秋分・夏至・冬至などの日の出の方角を意識した向きに建設されていることから、太陰暦だけでなく太陽暦も併用していたことは想像に難くない。

著者は、言葉にも強い関心を示している。日本では、「イチ・ニイ・サン」の現代数詞とともに「ひとつ・ふたつ・みつ」の古代数詞も生きている。20の「はた」や30の「みそ」という古代数詞も健在だ。古代数詞は、中国から現代数詞が導入される以前から根づいていた数文化に残った。

「第四章 金銀銅の社会史」では、縄文から現代までの鉱業・冶金史に光を当てていて面白い。新井白石の『折たく柴の記』から、17世紀後半だけで金240万両、銀37貫、銅約7万トンが海外に流出したという。日本は、江戸時代には世界一の貴金属輸出国だったが掘り尽くしてしまったのだ。

「第六章 アルスの世界」は、他の章と毛色が変わっている。ラテン語の自然を意味する「ナトゥーラ(natura)」に対する概念としての「アルス(ars)」が紹介しながら、科学史を概観しているのだが、「科学」に関する著者の想いが溢れ出る記述となっている。

日本語では「技術」や「技芸」と訳されるアルスは、自由人のための「自由技芸」と奴隷のための「機械技芸」の2つからなっていた。

アルス(技芸)
 自由技芸(artse liberales)
  三学(tivium):言語を扱う
   文法、弁証術(論理学)、弁論術(修辞学)
  四科(quadrivium):調和を扱う
   算術、幾何学、天文学、音楽
 機械技芸(artes mechanicase)
   冶金、料理、畑仕事、絵画、彫刻、建築、音楽(演奏)、舞踊、服飾 など

西欧のアカデミズムはこの伝統に基づいていた。貴族のための教育である「自由技芸」と奴隷(職人)のための教育である「機械技芸」である。だから、東京大学に工学部ができたとき、欧米人は驚いたという。大学はリベラル・アーツ(自由技芸)を教える教育機関であり、職人の養成機関ではなかったからだ。東大工学部が世界最初の工学部だったのである。その後、欧米でも技術工学の重要性を認識して大学に工学部を設けるようになったのだから、明治政府に先見の明があったというべきだ。

哲学から自然科学と芸術が分離する過程を丁寧に説明しているが、専門化しすぎたことへの弊害を指摘している。最近は、素粒子に関する論文が年間1万件も発表されているという。だからこそ著者は、科学の源流にある「アルス」を忘れるなと説いている。

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