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『古語の謎―書き替えられる読みと意味』白石良夫(中公新書 2083)

古語の謎


『古語の謎―書き替えられる読みと意味白石良夫(中公新書 2083)

東野炎立所見而反見為者月西渡
ひむかしの のにかぎろひの たつみえて かへりみすれば つきかたぶきぬ

この和歌は、万葉集第1巻に「軽皇子宿于安騎野時柿本朝臣人麻呂作歌」として、4首が記載されているうちの3番目、48番歌であり、教科書にも載っているので誰もが知っている歌だ。

ではあるが、この訓は賀茂真淵による画期であり、それ以前は別の読み方をされていた。10世紀ごろには万葉集の読み方に混乱が起こったため、宮中の梨壷に撰和歌所という役所ができて万葉集の解読が始まったという。平安末期の元暦校本では、

あづまのの けぶりのたてる ところみて かへりみすれば つきかたぶきぬ

となっていた。また、鎌倉時代に作られた本歌取りで「あづま野」と「けぶり」「煙」という語句を使用した歌があり、賀茂真淵以前には「東野」は「あづまの」、「炎」は「けぶり」と読まれていたという。軽皇子が宿した「安騎野」は現在の奈良県宇陀市。大和高原にあり、奈良盆地の東に位置している。だから「東野」は地名であるとされていた。これを賀茂真淵は「東」で切断し方角の意味にとった。

一方、人麻呂歌以外の「炎」という漢字の用例を万葉集で検索すると、

366番歌(第3巻)の長歌「角鹿津乗船時笠朝臣金村作歌」にある
 「塩焼炎(しほやくけぶり)」
1047番歌(第6巻)の長歌「悲寧樂故郷作歌一首(田邊福麻呂之歌集)」の
 「炎乃 春尓之成者(かぎろひの はるにしなれば)」

のたった2例しかなかった。そして、『万葉集』で「炎」を「かぎろひ」と訓じたのは、人麻呂と田邊福麻呂の歌だけだ。

では、「かきろひ」とは何か。これがよくわからないらしい。いずれにしても、人麻呂歌は、祖母持統天皇の庇護のもとで15歳で即位し、「大宝令」を施行など律令制度の整備を進めたが25歳の若さで薨御した軽皇子(漢風諡号は文武天皇)の行く末を暗示するものといわれる。「犬が西向きゃ尾は東」のような当たり前すぎる理の歌に暗喩を仮託したい気持ちになるのはよくわかる。

ともかく、『万葉集』の言葉のいくつはかは、すでに平安時代には「古語」となっていて、契沖から荷田春満、賀茂真淵、本居宣長と続く国学(本書では本居宣長の用例に従い古学[いにしえまなび]としている)の系譜の中で、近代的文献学による解釈によって「読み」と「意味」が書き替えられたとする。賀茂真淵による訓が、何の批判もなく受け入れられていることに対する批判である。

著者は、契沖から本居宣長へとつながる国学を無批判に採用することに異を唱えている。人麻呂の「東野」歌をはじめ、濁点、鈴虫とキリギリスの違いなど常識とされている「古語の謎」に迫っている。教科書で習ったあの古語の意味は何だったのかと驚く記述の連続だ。

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